コニ氏のブログを読むじゃんね!

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2022年 楽曲 1選

世界でいちばん愛しい音 / 牧野由依

作曲:牧野由依

編曲:滝澤俊輔

作詞:岩井俊二

ミニアルバム「あなたとわたしを繋ぐもの」収録

 "いつか 心折れてくじけても 帰れる場所 残しておくからね"

 

この曲のタイトルを最初に見た時、牧野由依さんにとっての「世界でいちばん愛しい音」ってなんだろうな?と思って聞き始めたんですが、ピンと来たのはこの歌詞でした。

 

"天使の 小さな 寝息"

 

2022年3月に第一子女児の出産をされた牧野由依さんですが、ああ、この曲は出産のことをテーマに制作された曲なんだな、とここで気づいて鳥肌が立ちました。

 

ただし、これは実は元々牧野由依さんのイメージとは異なっていたようでした。今回は牧野由依さん本人がタイトルを考えたとのことでしたが、この曲の元のタイトルは「鼓動」だそうです。

 

──“世界でいちばん愛しい音”というタイトルは牧野さんが考えられたそうですね。その音とは歌詞に出てくる《天使の 小さな 寝息》のことですか?

 

イメージは鼓動だったんですよ。あまり説明するのもあれですけど、音源をよく聴くとちょっと鼓動っぽい音が聴こえると思います。妊娠中、子供の存在をちゃんと確認できるのがエコー検査での心音だったんです。“あぁ、本当にいるんだな”と思って。でも、検診って月に一回なので、それまでの間はちゃんと生きていてくれているか、本当に不安でしょうがないんですよ。そんな時に主人と話していて、“こんなに人の心音にフィーチャーした経験って今までの人生でなかったよね”と。

 

──なので、その心音が“世界でいちばん愛しい音”だと。

news.yahoo.co.jp

 

牧野 そうですね(笑)。元々この曲は、ボイスメモに入れた鼻歌が始まりになっていて。その音の中に、まだ生後1ヵ月にもなっていない娘の「うぅ~」っていう声が(笑)、ずーっと入っていたんですよね。だから、そういう雰囲気みたいなものも曲の中に残せたらな……と思って。曲の終盤、「どんな夢を叶えるんだろう」と歌ったあとにもう一回しあるんですけど、そこを鼻歌にして。曲を原点回帰させたといいますか。

www.lisani.jp

 

上記2つのインタビュー記事を読んでから改めて聞くと、大サビの裏に入っているブレスなんかも実は呼吸音のイメージだったりするのかな?とか思ったりしました。

 

また、スローテンポな曲調と牧野由依さんの柔らかなかつ透き通るような声質と合わさって、穏やかな気持ちで聞ける曲だなぁと最初に聞いた時から思っていたのですが、生後一ヶ月になっていないお子さんの横で歌っていた鼻歌から始まったと思うと納得です。

 

ちなみに、今回作詞を担当されている岩井俊二さんは映画監督で、牧野由依さんが7歳の頃から関わりがあり、岩井俊二さんの監督作品のうち、「Love Letter」「リリイ・シュシュのすべて」「花とアリス」の三作品で牧野由依さんが伴奏していたり、牧野由依さんの「ふわふわ♪」という曲のMVで岩井俊二さんが監督をされていたりと、牧野由依さんにとても関わりの深い方です。

 

そんな岩井俊二さんが書かれた歌詞の中でも一番上で挙げさせて頂いた

 

 "いつか 心折れてくじけても 帰れる場所 残しておくからね"

 

という歌詞に岩井俊二さんのセンスを凄く感じました。

 

牧野由依さんの父親(牧野信博さん)もピアニストとして活躍している方なのですが、牧野由依さんが幼少期にピアノを習っていた時の指導はかなり厳しいものだったという話を牧野由依さんから何度か聞いたことがあり、また子役時代から牧野由依さんを見てきた岩井俊二さんは、恐らく牧野由依さんの大変な部分も多く見てきた方だと思います。

 

そんな牧野由依さんの人生を見守ってきた岩井俊二さんだからこそ、牧野由依さんが自身の子供に贈る言葉としてこれほど意味を持つ言葉が書けたのではないかな、と思います。

 

――岩井監督の書いた歌詞を読んだときの感想を教えてください。

牧野:岩井監督は、歌詞を映像で送ってくださったんです。

――歌詞を映像で?

牧野:黒い画面が映っているムービーに曲が流れていて、そこに歌詞が出てくるんです。

――そんな歌詞の伝え方は、初めて聞きました。

牧野:私も初めてです(笑)。まず、それにびっくりしました。「さすが!」って(笑)。歌詞の世界観としては、やっぱり岩井さんならではでしたし、映像が浮かぶような歌詞で、岩井さんの書かれる映画の小説を読んでいるような感覚になりました。

 

この作詞エピソード、インスト音源で歌詞だけ出てくる時のムービーって流石に僕も体験したことないので、どういう感じなのか気になりますね。

 

あと、岩井俊二監督の映画や脚本は必ず暗い部分や現実を突きつける部分があるというイメージで、この曲の歌詞にも《あきらめたばかりの空を》という暗さを感じさせるフレーズがあって。 恵まれた状況で出産できる人ばかりではないということですね。お子さんを身ごもりながら大変な暮らしをしている人もいらっしゃるし、いろんな時間を過ごしていらっしゃる方がいる。子供が生まれてハッピーというだけじゃなく、そういう影を落とす部分にもスポットライトを当てているのが岩井さんらしいです。

 

──小さな希望にあふれていて、《いつか》という言葉に未来を感じます。

 

そうですね。最後に《どんな夢を見ているんだろう/どんな夢を叶えるんだろう》という歌詞があるんですけど、それはまさに私も日々思っていることです。

news.yahoo.co.jp

 

実は最初に聞いた時、歌詞の中で複数回登場する「ふたり」が示しているものについて少し違和感があったんですが、上記のインタビューを読んだ時、自分の中で形になったことがあって、

 

 "いつか いつかきっと話すから ふたりがまだ 出会ってもない時のことも"

 

 "いつか そしていつかきかせてね ふたりの愛しい歌を"

 

上2つの歌詞のうち、「ふたり」は違うものを指しているのかな、と思いました。上の「ふたり」は牧野由依さんとお子さんのことで、下の「二人」はお子さんとお子さんがこの先「いつか」出会う誰かなのかな、と勝手に解釈しました。「ふたりの愛しい歌」というワードチョイスが音楽一家の牧野由依さんのお子さんに向けたワードらしいな、と個人的に思っています。

 

また、下の2つの歌詞について

 

 "いま ひとりでに 刻みだすよ あなたの鼓動(うた)"

 

 "いま ひとりでに 奏でるよ あなたの人生(うた)"

 

最初に歌詞を見た時、「うた」に振られた漢字が2つあるなとは思っていたのですが、タイトルの原題が「鼓動」だと知った時はなるほど…と思いました。こんな形で原題が活かされていたんですね。

 

僕が音楽と向き合う時のスタイルってファーストインプレッションがかなりのウェイトを占めているので、コンテンツ曲以外ではあまり歌詞を確かめて反芻しながら何度も聞くことはないのですが、この曲はコンセプトも相まって歌詞を何度も確かめながら聞きたくなる曲だなぁと思っています。

 

また、「世界でいちばん愛しい音」が収録されているミニアルバムのタイトル「あなたとわたしを繋ぐもの」について、最初に見た時は「あなたとわたし」は牧野由依さんとファンのことなのかな?と思っていたんですが、多分もっと色々な関係のことを表しているんだな、と思いました。

 

それは牧野由依さんとお子さんのことであったり、岩井俊二さんのことであったり、牧野由依さんの大学の同期でオタクにも馴染みのある滝澤俊輔さんであったり、もしかしたらファンとファンだったりも含まれたりするかもしれません。

 

――ミニアルバムの制作が決まったとき、どのようなアルバムにしたいと考え、スタッフさんたちとはどのようなことを相談しましたか?

牧野:久しぶりに『ARIA』で主題歌を担当させていただき、メジャーデビューをさせていただいたフライングドッグさんから、再びリリースさせていただけることになったりと、ご縁がまた繋がり再会する機会が、その時期とても多くて。今までの繋がりとか、私と聴いてくださる方々を繋ぐものとか、未来の自分に繋いでいけるものといった、いろいろな繋がりをギュッと一つに集結させたアルバムにしていきたいね、という話をしました。

www.animatetimes.com

 

「あなたとわたしを繋ぐもの」に収録されている楽曲の一覧には「ウンディーネ ~2021 edizione~」が入っているのですが、僕が牧野由依さんを知ったきっかけはTVアニメ「ARIA」だったので、そういう意味では僕個人としても「あなたとわたしを繋ぐ」アルバムだったな、と思います。

 

11月には「あなたとわたしを繋ぐもの」を引っ提げたライブとしてビルボードライブの横浜と大阪で2公演ライブがあったのですが、「世界でいちばん愛しい音」はアンコールで披露されていました。

 

この公演がとにかく本当に良くて、何が良かったかと言うとビルボードライブの音響がとにかく良かったです。今まで行ったことのあるイベント会場の中で一番音が綺麗かつ低音と高音のバランスが良かったと思います。牧野由依さんのライブはほぼ必ず牧野由依さんが弾き語りする曲があり、「世界でいちばん愛しい音」も弾き語りしていたので音響の恩恵をかなり得ていた気がしました。

 

特にイントロの柔らかなピアノからAメロに入る部分が個人的にメチャメチャ好きなので、弾き語りで聞くことができて本当に嬉しかったです。

 

ちなみにビルボードライブはディナーショー形式なので、ゆったりアルコール入れながら音楽に浸れるのも加点要素でしたね。なんと「世界でいちばん愛しい音」のダイジェストが期間限定(?)で下記の動画から見れるようなので、ぜひ見てみてください。

 

ここまで色々と書かせて頂きましたが、ここまで「アーティスト自身」を表現できている曲は他になかなか無いのではないかな、と思います。素晴らしい曲を本当にありがとうございました。